~人がつながると、組織は動き出す~

「何度言っても、動いてくれない」

「もう少し自分で考えてほしい」

「どうして、こんなことまで言わないと分からないんだろう」

経営者やリーダーなら、一度はそんな気持ちになったことがあるのではないでしょうか。

伝えている。

教えている。

機会も与えている。

それなのに変わらない。

そんな状況が続けば、つい、

「本人の意識の問題では?」

と思いたくなるものです。

でも、そこで少しだけ視点を変えてみたいのです。

「言ったのに動かない」は、本当に相手だけの問題なのでしょうか。

私たちは「自分の見えている世界」から相手を見る──

人は、目の前で起きていることを、そのまま見ているようで、実はそうではありません。

これまでの経験や価値観、思い込みを通して見ています。

たとえば、部下がなかなか自分から動かない。

その姿を見て、

「主体性がない」

「やる気がない」

「責任感が足りない」

と思うかもしれません。

でも、それは「事実」でしょうか。

実際に起きていることは、

「こちらから声をかけるまで、行動を起こしていない」

ということかもしれません。

そこに「主体性がない」「やる気がない」という意味をつけているのは、自分自身です。

この「起きていること」と「自分の解釈」を分けてみること。

それが、現実とつながるための大切な一歩だと思います。

動かないのではなく、「動けない」のかもしれない──

では、その人はなぜ動かなかったのでしょう。

何をすればいいのか、本当は分かっていないのかもしれない。

自分で判断して失敗するのが怖いのかもしれない。

以前、自分で動いたときに注意された経験があるのかもしれない。

上司が求めているゴールが見えていないのかもしれない。

あるいは、本人なりに動いているけれど、リーダーが期待する「動く」とは違っているのかもしれません。

ここを見ないまま、

「もっと主体的に!」

「自分で考えて!」

と伝え続けても、状況はなかなか変わりません。

なぜなら、つながっていない場所がそのままだからです。

相手を変えようとすると、見えなくなるもの──

人が思うように動いてくれないと、私たちは相手を変えようとします。

もっと伝える。

もっと教える。

ルールを増やす。

細かく確認する。

それでも変わらないと、さらに強く言う。

でも、ここで一度、自分自身にも問いかけてみてほしいのです。

「私は今、何を見ているんだろう?」

「この人はやる気がない」と決めつけていないか。

「普通なら分かるはず」と、自分の基準を当たり前にしていないか。

「ここまで言ったのだから伝わっているはず」と思っていないか。

相手とのつながりが切れているとき、実は同時に、自分と現実とのつながりも切れていることがあります。

「なぜ?」ではなく「何が起きている?」──

「なぜ、やらないの?」

そう聞かれると、人は責められているように感じることがあります。

すると、自分を守るために、

「忙しかったので」

「聞いていませんでした」

「時間がなくて」

と、理由を説明することに意識が向きます。

それよりも、

「今、何が起きているんだろう?」

と一緒に見てみる。

「どこで止まった?」

「何が分かりにくかった?」

「動こうとしたとき、何か迷ったことはあった?」

そう問いかけると、それまで見えていなかったことが出てくることがあります。

大切なのは、相手を追及することではありません。

現実を一緒に見ることです。

リーダーが変わると、関係性が変わる──

社員に変わってほしい。

もっと成長してほしい。

そう願うことは、決して悪いことではありません。

むしろ、期待しているからこそ出てくる思いだと思います。

でも、人を変えることはできません。

私たちにできるのは、自分の関わり方を見直すことです。

自分は何を伝えているのか。

相手はどう受け取っているのか。

何が行動を止めているのか。

そして、自分自身は現実をどう見ているのか。

リーダーが「相手を変える」ことから「つながりを見る」ことへ視点を変えると、関係性も少しずつ変わり始めます。

「動かない」の奥にあるものを見る──

組織では、どうしても目に見える「行動」や「結果」に意識が向きます。

でも、その行動の奥には、その人なりの理解や経験、迷いがあります。

だから、

「言ったのに動かない」

で終わらせない。

  • 「事実」と「自分の解釈」を分けてみる
  • 「動かない」ではなく「何が動きを止めている?」と考える
  • 相手だけでなく、自分の思い込みにも目を向ける
  • 「誰が悪い?」ではなく、一緒に現実を見る
  • 相手を変える前に、つながりを見直す

そんな関わりが、人と人をもう一度つなげていくのだと思います。

人を動かそうとする前に、まず「自分は今、何を見ているのか」に気づく。
そこから、人と人の本当のコミュニケーションが始まるのかもしれません。