『伝わらないの正体を解き明かすシリーズ』④
~5つの層から読み解くコミュニケーション~
「そんなつもりで言ったんじゃないんです」
「私はそういう意味で受け取りました」
職場でも家庭でも、こんな会話を耳にすることがあります。
お互いに悪気はない。
むしろ、良かれと思って伝えている。
それなのに、なぜズレが生まれてしまうのでしょうか。
ここまでのシリーズでは、
私たちは事実ではなく認識で生きていること。
そして、人は見えている範囲の中で判断していること。
さらに、その出来事にどう反応するかは自分で選択していることをお伝えしてきました。
実は、人とのズレはこれらが重なったところで生まれます。
例えば経営者が、
「もっと主体的に動いてほしい」
と社員に伝えたとします。
経営者にとっては、
「自ら考え、提案し、行動してほしい」
という意味かもしれません。
しかし社員は、
「失敗するなと言われている」
と受け取るかもしれません。
どちらが正しいのでしょうか。
実は、どちらもその人の世界では正しいのです。
経営者には経営者の経験があります。
社員には社員の経験があります。
過去の成功体験も違えば、失敗体験も違う。
価値観も違う。
見えている景色も違う。
だから同じ言葉を聞いても、同じ意味にはなりません。
私たちはつい、
「なぜ分かってくれないのだろう」
と考えます。
しかし相手もまた、
「なぜ分かってくれないのだろう」
と思っているかもしれません。
ここで大切なのは、相手を説得することではありません。
まずは、
「私と相手は違う世界を見ているかもしれない」
と気づくことです。
その視点を持つだけで、コミュニケーションは大きく変わります。
私は組織づくりの現場で、
問題が起きているときほど、
誰が正しいかではなく、
何が見えているのかを確認することが大切だと感じています。
なぜなら、ズレは悪いものではないからです。
ズレがあるからこそ、自分には見えていなかった視点に気づくことができます。
ズレがあるからこそ、新しい発想が生まれることもあります。
問題なのはズレそのものではありません。
ズレがあることに気づかないことです。
人は違う。
見えている世界も違う。
だからこそ対話が必要なのです。
そして、そのズレの多くは、
「こうあるべき」
という思いから大きくなっていきます。
次回は、
「理想と現実のギャップが苦しみを生む」
についてお伝えします。
私たちが無意識に持っている「こうあるべき」が、人との関係にどのような影響を与えているのかを一緒に考えていきましょう。
まとめ
- 人とのズレは認識や経験の違いから生まれる
- 同じ言葉でも人によって意味づけは変わる
- ズレは悪いものではなく自然なもの
- 大切なのは誰が正しいかではなく何が見えているか
- 対話は違う世界を理解し合うためにある
✨分かり合えないのではありません。まずは、お互いが違う世界を見ていることを知ることから始まるのです。