「共感力が大事」と言われる時代になりました。
しかし、実際の現場では“共感しているつもり”が、逆に相手のペースを乱してしまうことがあります。

たとえば——。
意味のないうなずきを、相手の話すリズムも考えずに連発する人。
悪気はないのに、相手との距離感をまったく意識していない。
その結果、かえって会話が雑に感じられ、心の距離が広がってしまう。

共感とは、善意だけで成立するものではありません。
そして「悪い人ではないけれど…」と、静かに距離を置かれてしまうこともあるのです。


共感は“目的”ではなく、信頼へ向かうための技術

共感力とは、相手を理解し、信頼へ向かうための“手段”です。
うなずきの多さや笑顔の量ではありません。
むしろ雑なうなずきは、相手の流れを遮り、安心感を奪います。

共感は「感じる」だけでは不十分。
相手のペースを尊重し、必要なタイミングで心を添える技術が必要です。


人は「自分の話しているテンポを壊される」と不信感を覚える

人の脳は、話しているときに“自分のリズム”が整っていると安心します。
そこに、過剰なうなずきや強い相づちが入ると、

  • 話を急かされている
  • 落ち着かない
  • 聞いているようで聞いていない
  • 自分のペースが奪われる

こうした感覚が生まれます。
すると、「雑に扱われている」という印象が積み重なり、無意識に距離を置きたくなるのです。

善意のはずが“相手の世界に踏み込みすぎる行為”になってしまう。
共感が機能しない典型例です。


「うん、うん、うん…」の無意識な連続が会話を壊す

ある女性リーダーの相談でのこと。
部下の話を聞くとき、彼女は常に
「うんうんうんうん!」
と強くうなずいていました。

本人は「聴いてますアピール」のつもり。
ですが部下はこう感じていました。

「話すテンポが崩れるし、焦る」
「聞いてくれてるというより“早く結論言って”に感じる」

彼女はショックを受けました。
しかし、ペースを整えて

  • 間を置く
  • うなずきは少なめ
  • 相手の息継ぎに合わせる

この3つを意識しただけで、部下の表情が変わり、深い話が自然に飛び出すようになった

“本物の共感”に必要な3つの技術

  1. 相手のペースを観察する
     話の速さ・間・呼吸のリズムを尊重する。
  2. うなずきは「相手の言葉が着地した瞬間」に
     タイミングが質を決める。量ではない。
  3. 相手の意図を受け止めてから、短い言葉で返す
     「そう感じたんですね」「大事にしたいことなんですね」
     無駄に飾らず、芯をとらえる。

共感は、情報収集でも評価でもなく、
相手の世界にそっと寄り添う技術です。


経営者・講師へのメッセージ──“聞く力”は影響力の土台

立場が上がるほど、あなたの一挙手一投足が周囲に与える影響は大きくなります。
だからこそ、雑に見える共感は致命的です。

共感は優しさの表現であると同時に、
信頼を生むプロフェッショナルなスキルです。

「うなずけば共感になる」ではなく、
「相手が話しやすい場をつくれているか」で判断してください。

この違いに気づけるかどうかが、関係性の質を決めます。


まとめ

  • 共感は“うなずきの量”ではなく“相手のペース”を尊重する技術
  • 強すぎる相づちは、善意でも相手のリズムを壊す
  • タイミング・間・呼吸を合わせるだけで関係が変わる
  • 聞く力は信頼をつくる経営者・講師の必須スキル

共感とは、相手の心に静かに寄り添い、安心して話せる“場”をつくることです。