『分かっている』を『できるに変える』シリーズ③

これまでの2回では、

「頭では分かっていても、本番ではできないことがある」

そして、

「自分ではできているつもりでも、相手からの評価は違うことがある」

ということを書いてきました。

では、本番で相手を見ながら、その場に合わせて対応できる人は、何が違うのでしょうか。

私は、対応力とは、その場で突然生まれるものではないと思っています。

対応力は、想定と経験の積み重ねによって育つものです。

「対応力がある人」は、何も考えずに答えているわけではない──

営業やプレゼンの場で、どんな質問にも落ち着いて答えられる人を見ると、

「頭の回転が速いんだろうな」

「もともと話すのが上手なんだろうな」

と思うことがあります。

もちろん、それもあるかもしれません。

でも、実際には、できる人ほど事前にたくさんのことを考えています。

「この質問が来たら、どう返すか」

「相手が迷っていたら、何を確認するか」

「反応が薄かったら、どこから聞き直すか」

「想定と違う反応が返ってきたら、どうするか」

あらかじめいくつものパターンを持っているからこそ、本番で慌てずに対応できます。

選択肢がないと、その場では動けない──

本番で余裕がなくなる理由のひとつは、

「次に何をすればいいか分からない」

からです。

選択肢がひとつしかなければ、それが通用しなかった瞬間に止まってしまいます。

でも、

AがダメならB。
Bでも違えばC。

と、自分の中にいくつかの選択肢があれば、相手を見ながら変えることができます。

これは営業だけではありません。

講師として受講者に問いかけたとき。

経営者として社員と話すとき。

会議で想定外の意見が出たとき。

準備していた通りに進まない場面ほど、その人の対応力が表れます。

そして、その対応力を支えているのが、事前の想定なのです。

経験は「数」だけでは増えない──

ただし、経験を重ねれば自然に対応力が上がるかと

ただし、経験を重ねれば自然に対応力が上がるかというと、必ずしもそうではありません。

同じことを何度繰り返しても、

「今日はうまくいかなかった」

だけで終われば、次にはつながりません。

大切なのは、

何が起きたのか。
自分は何を見ていたのか。
どこで判断に迷ったのか。
他にどんな選択肢があったのか。

そこを振り返ることです。

やってみる。
振り返る。
次の選択肢を増やす。
もう一度やってみる。

この繰り返しによって、経験が「対応力」に変わっていきます。

準備するから、相手を見ることができる──

準備というと、

「台本を覚えること」

「失敗しないように完璧にしておくこと」

と思われがちです。

でも、本当に必要なのは、台本通りに進めることではありません。

むしろ、台本通りにいかなくなったときに、相手を見て判断できる余裕をつくることです。

「今、この人は何に迷っているのか」

「本当に聞きたいことは何なのか」

「予定していた話より、今はこちらを聞いた方がいいのではないか」

そう考えられる余裕があって、初めて相手に合わせた対応ができます。

だから、準備は自分のためだけではありません。

相手を見るために準備する。

私はそこが、とても大切だと思っています。

経営者・講師ほど「その場で何とかする」に頼らない──

経験を積んでくると、

「その場で何とかできる」

と思いやすくなります。

でも、立場が上がれば上がるほど、相手に与える影響も大きくなります。

だからこそ、

何が起こりそうかを想定する。
選択肢を持っておく。
終わったあとに振り返る。

この基本を繰り返すことが大切です。

本当に対応力のある人は、何でもその場で思いつく人ではありません。

準備しているからこそ、予定外のことにも対応できる人。

なのだと思います。

まとめ──

・対応力は、その場のひらめきだけで生まれるものではない
・できる人ほど、事前にいくつもの場面を想定している
・選択肢を持つことで、本番の余裕が生まれる
・経験は、振り返ることで初めて対応力に変わる
・準備の目的は、台本通りに話すことではなく、相手を見ること

✨その場でうまく対応できる人ほど、その場に至るまでの準備を大切にしています。

「分かっている」を「できる」に変えるのは、才能ではなく、想定し、実践し、振り返る積み重ねなのだと思います。