~人がつながると、組織は動き出す~

これまで5回にわたって、「つながり」という視点からコミュニケーションと組織について考えてきました。

コミュニケーションとは、単に上手に話すことではなく「つなげること」。

自分と相手。

自分と現実。

リーダーと現場。

意図と行動。

そして、行動と結果。

こうして振り返ってみると、組織がうまく動かなくなるとき、そこには何かと何かの「つながり」が切れていることがあると分かります。

だから私は、こう考えています。

組織を変えるとは、人を変えることではなく、「つながりをつくり直すこと」なのではないか。

組織がうまくいかないと、人を変えたくなる──

「社員がもっと主体的になってくれたら」

「管理職がもう少し部下と向き合ってくれたら」

「もっとコミュニケーションを取ってくれたら」

組織に課題があると、私たちはどうしても「人」に目が向きます。

もちろん、一人ひとりが成長することは大切です。

けれど、人だけを変えようとしても、組織全体が変わるとは限りません。

なぜなら、その人を取り巻く「つながり」が変わっていなければ、また同じことが起こるからです。

たとえば、

「自分で考えて動いてほしい」

と言いながら、失敗すると強く責める。

「何でも相談してほしい」

と言いながら、忙しそうにして話を聞かない。

「部署を越えて協力しよう」

と言いながら、それぞれの評価は自部署の成果だけ。

言葉では「こうしてほしい」と伝えていても、現実との間につながりがなければ、人はどう動けばいいのか分からなくなります。

問題が起きた場所だけを見ない──

第3回では、トラブルは「つながりが切れた場所」を教えてくれる、というお話をしました。

これは組織を見るうえで、とても大切な視点だと思っています。

たとえば、現場で報告漏れが起きた。

目の前に見えているのは「報告しなかった人」です。

でも、その背景をたどっていくと、

報告の基準が曖昧だった。

上司に相談しにくかった。

部署間で情報が共有されていなかった。

「これくらい自分で解決するべき」という思い込みがあった。

そんな別の場所に原因があるかもしれません。

つまり、問題が表れた場所と、つながりが切れた場所は同じとは限らないのです。

だからこそ、誰かをすぐに変えようとする前に、

「どことどこの間で、つながりが切れているのだろう?」

と見ていくことが必要になります。

リーダーは「人を動かす人」なのだろうか──

リーダーというと、

「人を引っ張る人」

「指示を出す人」

「人を動かす人」

というイメージがあるかもしれません。

でも私は、もう一つ大切な役割があると思っています。

それは、

「つながりをつくる人」です。

経営者の思いと、現場をつなぐ。

人と人をつなぐ。

部署と部署をつなぐ。

一人ひとりの仕事と、会社の目的をつなぐ。

気づきを行動につなぐ。

そして、行動した結果を次の一歩につなぐ。

リーダーがすべての答えを持つ必要はありません。

むしろ、

「今、何が起きている?」

「どう受け取っている?」

「どこで止まっている?」

「何があれば次へ進める?」

と問いながら、つながっていない場所を一緒に見つけていく。

それも、リーダーにできる大切な関わり方ではないでしょうか。

つながるとは「仲良くすること」ではない──

ここで一つ、伝えておきたいことがあります。

「人がつながる」というと、みんなが仲良く、いつも分かり合っている組織を想像するかもしれません。

でも、私が考える「つながる」は、そういうことではありません。

意見が違ってもいい。

考え方が違ってもいい。

時には、厳しいことを伝えなければならないこともあります。

大切なのは、

「違いがあることを分かったうえで、それでも相手と現実を見ようとすること」。

自分の考えだけで相手を決めつけない。

相手に合わせるだけでもない。

起きていることを一緒に見ながら、目的に向かって必要な対話を続けていく。

それが、組織における「つながり」なのだと思います。

人がつながると、組織は動き出す──

このシリーズの最初に、

「コミュニケーションとは、つなげること」

とお伝えしました。

6回を通して考えてきた今、改めてこの言葉に戻りたいと思います。

自分と自分がつながる。

自分と現実がつながる。

自分と相手がつながる。

リーダーと現場がつながる。

意図と行動がつながる。

行動と結果がつながる。

そして、一人ひとりの仕事が組織の目的につながっていく。

その一つひとつの「つながり」が、組織を動かす力になっていくのではないでしょうか。

組織を変えたいと思ったとき、

「誰を変えればいい?」

ではなく、

「今、どこをつなぎ直したらいい?」

と考えてみる。

  • コミュニケーションとは「つなげること」
  • 組織の問題には「つながりの切れ目」が隠れていることがある
  • 人を変える前に、人と人、人と現実の間を見る
  • リーダーは、人を動かすだけでなく「つながりをつくる人」
  • つながるとは、同じになることではなく、違いがあっても対話を続けること

組織は、仕組みだけで動いているのではありません。
人と人、思いと行動、そして現実がつながったとき、組織は自ら動き始める。
それが、「人がつながると、組織は動き出す」ということなのだと思います。