「伝えたはずなのに、なぜか伝わっていない」
「同じ説明をしているのに、相手の受け取り方が毎回違う」

経営者・講師・リーダーとして活動していると、こんな経験は必ずあります。
もちろん、相手が悪いわけではありません。
多くの場合、原因は 『伝えたつもり』と『伝わっている現実』の間にあるフィルターの差 です。

今日はそのズレを埋める技術──
「意図伝達(METHOD)」 についてお話しします。

意図が言葉に乗ったとき、人は初めて動き出す・・だからこそ、言葉に「力」を宿らせる技術が必要な


なぜ意図が伝わらないのか──『フィルター』という見えない壁

人の脳は、聞こえた言葉をそのまま受け取るわけではありません。
必ず、

  • 過去の経験
  • 思い込み
  • 価値観
  • 役割意識
  • 恐れや期待

といった“フィルター”を通して意味づけをします。

このフィルターがあるからこそ、
同じ言葉でも、人によって解釈がまったく違う のです。

たとえば
「早めに準備しておいてね」
という言葉ひとつ取っても、

Aさんにとっては「今すぐやる」
Bさんにとっては「明日で大丈夫」
Cさんにとっては「空いた時間でやればいい」

このように、意図が簡単にすれ違います。
相手にとってただの“音”になってしまいます。
だからこそ、言葉に「芯」を通す必要があるのです。


自分のフィルターに気づいていないと、相手のフィルターは見えない

ここで大切なのは、
相手のフィルターを理解するには、まず自分のフィルターを知る必要がある
ということです。

自分の中にも、

  • 『こうあるべき』
  • 『これくらいは当然伝わる』
  • 『普通ならこう理解するはず』

といった前提が必ずあります。

この前提が曖昧だと、
相手がどこで誤解したのかにも気づけません。

つまり、
伝わらない理由は相手だけにあるのではなく、自分のフィルターにも原因がある。

リーダーとしてこれに気づけるかどうかは、伝達力に大きく影響します。


心が曇るだけで、意図は正確には届かない

もう一つの重要なポイントが、
『心の状態』もフィルターになる ということです。

  • 怒っている
  • 焦っている
  • 疲れている
  • 不安がある
  • モヤモヤを抱えている

こうした『心の曇り』は、言葉そのものより強く相手に届きます。

たった1センチ心が濁っただけで、
声のトーン、間の取り方、表情、語尾…
あらゆるものが変わります。

すると相手は、
“言っている内容”ではなく、
“感情の揺れ”のほうを強く受け取ってしまう。

だから、意図がズレていくのです。

20年の司会業で気づいた『意図が届く瞬間』

私自身、司会業の仕事をしていたとき、
同じ台本を読んでいるのに
「伝わる日」と「伝わらない日」があることに気づきました。

違いは発声でも言葉遣いでもありません。
『自分の意図が澄んでいるかどうか』。

  • 今日は自分の心が急いでいた
  • 今日は相手の反応に過度に期待していた
  • 今日はうまくやろうとしすぎていた

そんな『自分のフィルター』が曇った日は、驚くほど伝わりません。

逆に、
「何を伝えたいのか」
「なぜこれが大切なのか」
がクリアに整理されていると、
同じ言葉でも自然と届くようになります。

経営の現場でも全く同じことが起きています。

経営の現場でも全く同じことが起きています。

『伝えたつもり』を“伝わる確信”に変える3ステップ

意図伝達は、才能ではなく技術です。
以下の3ステップで磨くことができます。

相手はどんな経験や価値観を持っているのか。
どんな恐れや固定概念を抱えているのか。

これを想定するだけで、言葉の選び方が変わります。


1)意図の言語化(自分のフィルターを知る)

  • なぜ伝えるのか
  • どんな行動変化を期待しているのか
  • 自分は何を前提にしているのか
  • 心は澄んでいるか

ここが曖昧だと、どんな言葉も弱くなります。


2)相手のフィルターを推測する

相手はどんな価値観で、どんな経験をしてきたのか。
どんな恐れや固定概念があるのか。

相手の背景を理解するほど、
言葉の選び方が変わり、誤解が減っていきます。


3)言葉・感情・態度の一致

最後に、
意図と言葉、感情が一致しているか を確認します。

  • 怒りや焦りが混ざっていないか
  • 伝えたい大切さが声に滲んでいるか
  • 相手の未来を信じて渡しているか

この“一致”こそが、
言葉を力のある言葉に変える最も大きな要素です。

最後に、言葉に「感情の芯」を通します。
怒りでも焦りでもなく、
「大切に思っている」「期待している」という意図に寄せること。

この感情の一致こそ、言葉を『力のある言葉』に変える最も重要な要素です。


経営者・講師の皆さまへ──言葉は「行動」と「関係性」をつくる

会議が噛み合わない
指示がズレる
伝えたつもりが誤解になる

その原因の多くは、能力不足ではありません。
意図とフィルターのズレ です。

だからこそ、改善できる余地が大きいのです。

リーダーの言葉が変わると、
社員の動きも、場の空気も、組織の結果も変わります。

強い言葉ではなく、
澄んだ意図のある言葉。
これが人を動かす力になります


まとめ

  • 言葉は相手の『フィルター』を通して解釈される
  • 相手のフィルターを見るには、まず自分のフィルターに気づくこと
  • 心が曇ると、言葉より“感情の濁り”が強く伝わる
  • 意図伝達は「意図の言語化→相手理解→言葉と感情の一致」で磨ける
  • 意図が澄んだ言葉は、人の行動を必ず変える

言葉に力を宿すとは、自分を整え、相手の未来を信じて意図を渡すことなのです。