自己認識と経営シリーズ①
「何度伝えても伝わらない」
「こちらは良かれと思って言っているのに、なぜか相手に届かない」
「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」
経営者やリーダーの方から、そんなお話を伺うことがあります。
多くの方は、その原因を「伝え方」にあると思っています。
もっと上手に話せばいいのではないか。
もっと分かりやすく説明すればいいのではないか。
もちろん伝え方の工夫は大切です。
しかし、さまざまな経営者の方と関わる中で感じるのは、「伝わらない」という問題の本質は、必ずしも伝え方だけではないということです。
伝え方の前にあるもの──私たちは自分の見たい世界を見ている
人は誰でも、自分なりの価値観や経験を通して物事を見ています。
それは長年の人生経験の中で作られてきたものであり、普段は意識することもありません。
だからこそ、同じ出来事を見ても、人によって受け取り方が大きく変わります。
経営者が「期待を込めて伝えた言葉」が、社員には「プレッシャー」として届くこともあります。
励ましのつもりが、指示や管理と受け取られることもあります。
相手が理解していないのではなく、見ている世界が違うだけなのかもしれません。
しかし私たちは、その違いに気づかず、
「なぜ分かってくれないのだろう」
「なぜ同じように考えてくれないのだろう」
と思ってしまいます。
実は、その瞬間に見直したいのは相手ではなく、自分自身の見方なのです。
「伝わらない」の奥にある反応のクセ
さらに深く見ていくと、「伝わらない」と感じる背景には、自分自身の反応のクセが隠れていることがあります。
例えば、
- 思い通りにならないとイライラする
- 相手に理解されないと不安になる
- 自分の正しさを証明したくなる
- 相手の反応を過度に気にしてしまう
こうした反応は誰にでもあります。
問題なのは、その反応に気づかないまま行動してしまうことです。
すると、相手とのコミュニケーションの問題だと思っていたことが、実は自分自身の内側の問題だったということも少なくありません。
だから私は、「伝え方」を学ぶこと以上に、「自分の反応を知ること」が大切だと感じています。
伝え方から始まり、自己認識へ向かう
多くの方は、
「伝え方を改善したい」
ではなく、
「なぜ伝わらないのだろう」
という悩みから学びを始めます。
そして対話を重ねる中で、少しずつ見えてくるのです。
自分はどんな前提で人を見ているのか。
どんな思い込みを持っているのか。
どんな場面で感情が動くのか。
どんな時に反応してしまうのか。
ここが見えてくると、不思議なことに相手を変えようとする気持ちが少しずつ減っていきます。
その代わりに、
「自分はどう関わるか」
という視点が生まれてきます。
これが自己認識の第一歩です。
経営者・リーダーへのメッセージ──相手を変える前に見つめたいこと
経営者は日々、多くの人と関わりながら組織を動かしています。
だからこそ、コミュニケーションの質はとても重要です。
しかし、本当に組織を変える力になるのは、テクニックだけではありません。
自分自身の認識や反応に気づくことです。
「伝わらない」という悩みは、実は自分を知るための入り口かもしれません。
相手を理解しようとする前に、自分がどんな見方をしているのかを知る。
そこから、コミュニケーションも組織も少しずつ変わり始めます。
まとめ
- 「伝わらない」の原因は伝え方だけではない
- 人はそれぞれ異なる価値観や前提で物事を見ている
- コミュニケーションの課題の奥には自分自身の反応のクセがある
- 自己認識が深まることで関わり方が変わる
✨「なぜ伝わらないのか」という問いの先には、相手を変える方法ではなく、自分自身を知るヒントが隠れているのです。