伝え方の前に大切なこと 第1話
人はそんなに簡単には変わらない。でも、自分を知ることで見える景色は変わる。
「コミュニケーションを学んでいるのに、人間関係がなかなか変わらない。」
「学んでいるはずなのに、以前と同じことで悩んでいる。」
そんな悩みを抱えている方は少なくありません。
世の中には、コミュニケーション講座やコーチング、カウンセリング、リーダーシップ研修など、学びの機会がたくさんあります。
実際に熱心に学んでいる方も多くいらっしゃいます。
それにもかかわらず、
「部下にイライラしてしまう」
「家族との衝突がなくならない」
「良い関係を築きたいのに、思うようにいかない」
そんな声を耳にすることがあります。
なぜなのでしょうか。
私は長年、司会業や経営者支援の現場でコミュニケーションについて学び続けてきました。
そして多くの方と関わる中で感じるのは、問題は知識不足だけではないということです。
学んでいるのに変わらない理由──本当に足りないものは何か
多くの人は、
「相手を理解したい」
と思っています。
けれど、その一方で心のどこかに、
「相手に変わってほしい」
という思いも持っています。
部下にはもっと主体的になってほしい。
家族には自分の気持ちを理解してほしい。
周囲にはもっとこうしてほしい。
それは決して悪いことではありません。
誰もが自然に持つ感情です。
しかし、その思いが強くなるほど、相手を見るよりも、自分の期待や理想を見るようになります。
すると、どれだけ伝え方を学んでも、なかなか現実は変わりません。
なぜなら、言葉の奥にある「前提」が変わっていないからです。
知識よりも影響している「心のOS」
私はこれまで多くの方を見てきて、問題は伝え方そのものではなく、その人の前提や受け取り方にあることが少なくないと感じています。
私はそれを「心のOS」と呼んでいます。
パソコンのOSが動作の土台になるように、人にも無意識の価値観や思い込みがあります。
例えば、
- 失敗してはいけない
- 人に迷惑をかけてはいけない
- 自分が頑張らなければならない
- 正しいことを伝えれば相手は動くはず
こうした前提は、本人が気づいていないことも少なくありません。
そして、その前提が人との関わり方や言葉の選び方に大きな影響を与えています。
伝え方を学ぶことは大切です。
しかし、その土台となる心のOSを見ないままでは、学んだ知識を十分に活かすことができません。
私自身も20年かけて学んできた
実は私自身も、コミュニケーションについて相当学んできました。
司会という仕事は、人の話を聴き、その場の空気を感じ、相手の魅力を引き出す仕事です。
だからこそ、学び、実践し、繰り返し自分の中に落とし込んできました。
まるで身体に刷り込ませるように。
それでも、本当に納得できるレベルになったと感じられるまでには20年の歳月がかかりました。
だから私は、「学んでいるのに変われない」と悩む方に対して、努力が足りないとは思いません。
むしろ、多くの方は十分に頑張っています。
ただ、学びの前に、自分自身を見つめる時間が必要なのかもしれません。
経営者・リーダーにこそ大切なこと
経営者やリーダーは、人を育てる立場にあります。
だからこそ、伝え方や関わり方を学ぶことはとても重要です。
しかし、それ以上に大切なのは、自分自身がどんな前提で人を見ているのかを知ることです。
相手を変えようとする前に、自分の受け取り方を見つめる。
相手を理解しようとする前に、自分自身を理解する。
その積み重ねが、人との関わり方を少しずつ変えていきます。
まとめ
- コミュニケーションを学んでも変われない人は少なくない
- 問題は知識不足だけではない
- 人は無意識の「心のOS」に影響を受けている
- 相手を変えようとする前に、自分を知ることが大切
- 自己認識が深まることで、人間関係は変わり始める
私は、答えを教えることよりも、その人自身が気づき、本来の力を取り戻すことを大切にしています。
人はそんなに簡単には変わりません。
けれど、自分を知ることで見える景色は変わります。
そして、その景色の変化が、新しい一歩の始まりになるのだと思います。